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観光地を歩いていると、道端に置かれた空き缶やペットボトル、食べ終わったあとの容器が目に入ることがあります。
せっかくの美しい街並みも、ごみが散乱しているだけで、どこか残念な風景になってしまいます。
もちろん、ごみを道端に捨てる行為は褒められたものではありません。
しかし、ここで一つ気になることがあります。
そもそも、ごみを捨てる場所は十分に用意されているのでしょうか。
訪日観光客が増え続ける東京で、東京都がポイ捨て対策の強化に乗り出しています。
今回は、単なるマナーの問題として片づけるのではなく、観光客を迎える都市の仕組みという視点から考えてみたいと思います。
東京都がポイ捨て禁止の条例を検討
2026年9月、東京都がごみのポイ捨てを禁止する条例の制定を検討していることが報じられました。
東京都環境局の説明によると、都は廃棄物審議会に「散乱ごみ対策の強化」を諮問し、条例化を含めた対策の検討を進めています。
現在も都内の区市町村には、それぞれポイ捨てを規制する条例などがあります。
しかし、地域によってルールが異なり、多くの観光客が行き来する都市全体としては、対応に限界があるという問題があります。
そこで東京都が共通のルールを示し、自治体の取り組みを支援することが検討されているのです。
ただし、2026年10月時点では、東京都全域に適用される新たな条例の具体的な内容が確定したわけではありません。
都は2027年夏ごろの答申を予定しており、今後の議論によって制度の内容が決まっていくことになります。
すでに渋谷区では2,000円の過料
東京都全体の条例は検討段階ですが、渋谷区ではすでに具体的な対策が始まっています。
渋谷区は2026年4月に改正条例を施行し、6月から区内全域でポイ捨てをした人に対して2,000円の過料を科す制度を開始しました。
さらに、指定された地域で飲食料を販売する事業者などに、ごみ箱の設置を義務づける仕組みも導入しています。
ここで興味深いのは、ごみを捨てる人だけでなく、ごみが発生する商品を販売する側にも責任を求めていることです。
飲み物や食べ物を販売すれば、当然、容器や包装などのごみが発生します。
その後始末を購入者だけに任せてよいのか。
渋谷区の取り組みには、そんな問題提起も含まれているように思えます。
ごみ箱が少ないという、もう一つの問題
日本を訪れた外国人観光客が戸惑うことの一つに、街中のごみ箱の少なさがあります。
飲み物を買って歩きながら飲み終えたものの、空になった容器を捨てる場所が見つからない。
そんな経験は、日本人でもあるのではないでしょうか。
もちろん、ごみ箱がないからといって、ポイ捨てが許されるわけではありません。
しかし、観光客を積極的に呼び込み、街中で飲食や買い物を楽しんでもらうのであれば、それに見合ったごみ処理の仕組みも必要になるはずです。
東京都も、公共施設や駅などへのリサイクルステーションの導入を支援しています。
高機能なごみ箱の設置や、その後の管理・回収に対する補助制度も用意されています。
つまり、東京都の対策は罰則だけではなく、ごみを適切に捨てられる環境づくりにも向けられているのです。
観光で利益を得る人と、ごみを片づける人
ここでもう一つ考えたいことがあります。
観光客が増えれば、ホテルや飲食店、小売店などには経済的な利益が生まれます。
一方で、ごみの清掃や回収、街の美化に必要な費用は、自治体や地域の事業者、住民などが負担することになります。
観光によって利益を得る人と、その影響を引き受ける人が、必ずしも同じではないのです。
もちろん、観光業は雇用を生み、地域経済を支える重要な産業です。
だからこそ、観光を歓迎することと、住民の生活環境を守ることを対立させる必要はないと思います。
例えば、観光によって得られる税収の一部を清掃やごみ箱の維持管理に充てることも、一つの考え方でしょう。
飲食物を販売する事業者が、ごみの回収に協力する仕組みも考えられます。
大切なのは、誰か一人に責任を押しつけるのではなく、観光によって生まれる負担を社会全体でどう分担するかということではないでしょうか。
外国人観光客だけの問題なのか
訪日観光客の増加とポイ捨て問題が一緒に語られると、どうしても外国人観光客のマナーに注目が集まりがちです。
しかし、道端にごみを捨てるのは外国人だけではありません。
日本人によるポイ捨ても以前から存在しています。
また、観光客が増えた地域でごみが増加したとしても、そのすべてが外国人観光客によるものだとは限りません。
必要なのは、国籍によって人を区別することではなく、誰が訪れても守れる分かりやすいルールを整えることです。
多言語による案内、ごみ箱の適切な配置、事業者との協力。
そうした環境が整って初めて、ルールを守らない行為に対して厳しく対応することにも、より強い説得力が生まれるのではないでしょうか。
罰則だけで街はきれいになるのだろうか
ポイ捨てに過料を科すことには、一定の抑止効果が期待できます。
しかし、違反者を見つける人員も必要ですし、過料を徴収するための費用もかかります。
監視を強化するほど、行政の負担が大きくなる可能性もあります。
一方、ごみ箱を増やせば、回収や分別、衛生管理などの費用が発生します。
どちらの方法にも、お金と人手が必要なのです。
だからこそ、単純に罰則を厳しくするだけではなく、どの対策が実際にごみを減らし、費用に見合った効果を生むのかを検証する必要があります。
本来の目的は、違反者からお金を徴収することではなく、ごみのない街をつくることなのですから。
美しい街を守るのは、誰の役割なのか
観光客が増えることは、街に新しい活気をもたらします。
さまざまな国から人が訪れ、店がにぎわい、地域の文化が世界へ広がっていく。
それ自体は、喜ばしいことだと思います。
しかし、その街には観光客が訪れる以前から、毎日を暮らしている人たちがいます。
観光地であると同時に、誰かにとっては大切な生活の場所なのです。
訪れる人には、その街を汚さない責任があります。
そして、迎える側にも、街を清潔に保てる環境を整える役割があるのではないでしょうか。
東京都が進めるポイ捨て対策が、単なる罰則の強化で終わるのではなく、観光客にも住民にも過ごしやすい街づくりにつながることを期待したいと思います。
ごみを捨てた人を罰する街と、ごみが捨てられにくい街。
これからの東京が目指すべき姿は、どちらなのでしょうか。
その答えは、道端に置かれた一つの空き缶からでも、考え始められるような気がします。
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参考資料
– “東京都環境局「散乱ごみ対策 よくあるご質問」” (https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/inquiry/faq/resource/trash/qa)
– “渋谷区「きれいなまち渋谷をみんなでつくる条例」の改正” (https://www.city.shibuya.tokyo.jp/contents/koho-news/1604/20260315_bousai.html)
– “東京都「TOKYOクリーンアップアクション」” (https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/resource/recycle/keep-tokyo-clean)
– “TBS NEWS DIG「東京都『ポイ捨て』禁止条例を検討」2026年9月18日” (https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2957290)
※本記事は2026年10月20日時点で確認できる公表資料・報道をもとに構成しています。東京都の新たな条例は検討段階であり、今後内容が変更される可能性があります。


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